名古屋高等裁判所 昭和29年(う)449号・昭29年(う)450号 判決
本件控訴の趣意は、弁護人大池龍夫、坂井忠久の控訴趣意書を引用する。
その第一点の要旨は、原判決第二の所為は、数罪でなく、包括一罪であると謂うにあるが、犯罪の日時が接着し、犯罪の場所が同一で何れも清酒密造の目的であつて、犯意継続していたといつても、連続犯の規定が廃止されてからは刑法第五十四条に該当する場合を除き、特別の事情のない限り、原則として、犯罪の構成要件に該当する事実が、数個あれば、数罪とすべきものである。本件においては、論旨は原判決第二事実(公訴事実第二の(一)(二)(三))のみを指摘して、包括一罪と謂うが、原判決第一の(二)の清酒密造行為も、同列に論じなければ、趣旨が一貫しないことになる。即ち第一の(二)は、昭和二十六年九月十六日頃、材料を仕込んで、同月二十五日頃、醪二斗一升を製造し、同日右醪の中二斗位を濾過して、清酒一斗五升を製造したのであり、第二の(一)は、同月十九日頃、材料を仕込んで、発覚当時である同月二十六日醪二斗五升を製造し、(二)は、同月二十一日頃、材料を仕込み、同月二十六日醪三斗を製造し、(三)は同月二十四日頃、材料を仕込み、同じく二十六日醪三斗五升を製造し、まだ清酒に仕上げていなかつたもので、第一の(二)の経過から考へると第二の(一)(二)(三)においては、清酒に仕上げる予定日は、同日であつたとは考へられなくて、夫夫異つた日時に清酒として仕上げるのであつたことが想像される。清酒密造の過程として、醪製造の段階があり、その醪の一部を清酒に仕上げ、残りは、醪のまま所持していたような場合には、清酒密造と醪密造の二罪が成立すると解することはできないが、異つた日時に材料を仕込み、異つた日時に清酒として仕上げる場合には、清酒密造の目的は一貫して居り、一見して、営業犯又は継続犯とも見えるけれども、包括一罪と認定することはできない。尤も仕込みの日時が異つていても、清酒又は焼酎としての仕上げの日時が同時であつたり、又は連日引き続き仕込み又は仕上げをするような場合は、ある樽又は瓶に入れたものの密造行為の日時が異つていたからといつて、各樽又は瓶に入れてある酒類毎に数罪が成立すると解することはできない。かかる場合その一群の行為は、包括一罪と論ずべきである。本件の場合は、右と異り、全く独立した行為が、数回繰り返して敢行されたと認むべき場合であるから、各行為毎に犯罪が成立するものと解すべきである。所論の判例は、一罪としているが、本件と異り、焼酎として仕上げる日時が連続して間断がなく、且つ材料の仕込みの日時も本件よりもつと密着して居るので、右の判例を本件に適用するのは適切ではない。要するに本件の程度の事実関係では、包括一罪と解するより、数罪と解する方が、正当であるから、論旨は、採用することができない。
(裁判長判事 高城運七 判事 滝川重郎 判事 赤間鎮雄)